第二章ノ壱 プロローグ


 世界の初まりは一つの空間からだった。

 それから幾月経つと空が現れ、海が出現し、陸が出来上がる。

 そこに三種族が生を受けた。

 一つは白の翼。白の翼は世界の力を使う能力を身につけた。

 一つは黒の翼。黒の翼は自らの底に眠る力を使う能力を身につけた。

 一つは翼を持たぬ者。翼の持つ者と違い能力を身につけれない翼を持たぬ者は知能をつけた。

 その後、世界が三つに分かつまで三種族はそれぞれ子孫を残し、政を行い、世界の秩序を守っていた。

 そう、その時が来るまでは―――。




  昔、ある士官学校の教官が言っていた。
 その人は世界の歴史についての講義を受け持っていて、世界のあり方を独自の解釈と共に話す人だった。

「天使と悪魔は相入れない魂の持ち主であり、同じ世界での共存は見込めない。しかし例外がひとつある。それは天使の堕天による魂の転換。『堕天使』という存在だ。悪魔との共存を受け入れた天使は翼の色を黒に変え、地下界への忠誠を誓うらしい。どれぐらいの年月に何人の天使が堕天するのかははっきり分かっていない」

 前置きを言いおえると教官は話し続ける。「では、我々『転生天使』はどうだろう」と。

「人間から転生する天使は年間二千万人と言われている。人間が生まれ堕ちるに比べれば程遠い。その転生に世界のあり方は果たして関係ないのだろうか?
 転生天使を増やそうと試みた実験や、対策をとった時代があったらしいが、それは失敗に終わっている。転生では生まれないとされている『悪魔』と『天界天使』。転生でしか生まれない『堕天使』と『転生天使』。私はここ最近思うのだよ。もしかしたら堕天使と転生天使の生まれる頻度は比例しているのではないか……とね」

 自分はその話に衝撃を受けたのを覚えている。
 そう、世界は自分の思っている何倍も絡み合っていて、人間の頃には想像もつかない世界の理の中に自分はいるのだと。