次の日、朝登校すると机の上には一つの紙袋が置いてあった。
そしてその中身は今はもうとっくに引退してる黒い物体……。
「ビデオテープ?」
私はその言葉だけをポソリと吐いた。
ビデオテープの帯には筆ペンで何とも達筆に『ガンダム・SEED』と書かれていた。
ガンダム? 聞いたことはあったけど、今しているアニメ?
しかも爪をきちんと折ってある。上書き出来ないように……ってそこまでなのか??
私はそう思いながら先生に見つからないようにすぐにカバンへと閉まった。
あの頃の私はシリアス作品に全く触れていなかった。
確かに話の流れで何となく悲しいというものはあったが、なんだかんだハッピーエンドを求めていたし、それが常識! なんて偏った見方をしていた時期だった。
しかし、そのビデオテープで私の心は大きく動く。
休み時間に3人に話を聞こうとも「兎に角見ろ!」の一点張りで、私はしぶしぶ家に帰り父のビデオデッキでそれを再生することにした。
「ロ……ロボット?」
私はその作品に唖然とした。
今までファンタジーばかりを漁っていた私だ。
女の子が……女子高生がロボットアニメをススメるなんて!! まずそこに衝撃を覚えた。
ぼーっと画面を眺める。
今の私なら「うおおおおおお!! かっけえええ!! 機体の性能マジぱねえええ!!」だが、その頃の私は戦闘シーンを早送りするという何とも残念なことをしていた。
あの頃に戻れるなら自分自身に拳骨入れてもう一度見直させるレベルだ。
しかし、キャラクターの映像は綺麗だったし、せっかく借りたんだからと会話の部分はきちんと見ていく。
そんな私は見ていけば見ていくほど作品にのめりこんでいくのが途中から分かった。
そしてそのビデオを見終わる頃には結構しっかりハマっていた自分がいた。
そのビデオに納めてあるのは、かの有名なあの場面までだった。
そう、私は1人で叫んでいた……。
「ニコルううううううううう!!!!!」と……。
それからシリアス作品に美学があると感じるようになった。
主人公と幼馴染が敵同士! しかもお互いがお互いの戦友を殺してるなんて! おいおい。何て残酷な……そう思いながらも見ずにはいられない。
私はまだその頃はエヴァンゲリオンやスクライドという少し高度なストーリーなどに手を付けていなかった。その為だろうか、私はどっぷりと平成のガンダムにハマったのだった。
私の高校入学と同時期に沢山のアニメが放送され始めた。
我々はこう読んでいる『アニメ黄金時代』と……。
『NARUTO』『BLEACH』『銀魂』と言ったジャンプアニメはもちろんチェック!
それ以外も私は高校生になって友人関係が多彩になったことで多くの作品に触れることになる。
高校時代に心を動かされた作品は多くあるが、大きいのは『鋼の錬金術師』だろうか。
明るい性格なのに過去に大きな傷を持っている主人公とその弟というキャラへの親しみ。軍人のカッコよさに痺れ「軍人ものを書こう!」と思うようになり始めるのもこの作品に触れてからだ。
大佐をはじめとする大人のカッコよさや、最初から最後まで考え抜かれたストーリーと伏線の数々に感動を覚えていった。
しかも作者が女性!! なんと驚いたことか。
さらにCLAMPの最新作であった『ツバサ』も私の中では大きなインパクトだった。
異世界を渡り歩く! しかもさくらちゃんと小狼が!! ワクワクしっぱなしだった。
「異世界! そうか!! 異世界か!!」私はその頃から異世界へのあこがれを求めていくようになる。
そしてその頃からライトノベルというジャンルにも足を突っ込むことになる。
『キノの旅』最初に手に取ったのはその作品だった。
淡々とした作風、不思議な香りのする内容……。文章でここまで表現できるのか!?
こんなジャンルがあるのかと驚かされたものだ。
そして『涼宮ハルヒの憂鬱』衝撃だった……。
私の作風を覆すものだった。
「読みやすさってなんだ!? 私は人に読んで貰うということを考えているか?」そう思うようになった
。
どんどん増えていくアニメや小説の知識。
溺れるように楽しむ日々……。
そして考えるようになる。私はこのままでいいのかと。
書きたい物語が膨らんでいく。読んで欲しいと「欲」が芽生える。
そして私は決断するのだ。
仲良くなった3人に打ち明けようと……。