新しい相棒


 読者が4人になった私は創作意欲も4倍に膨れ上がっていた。3倍では無い。4倍だ。

 そんな私は高校生になって新しい環境を手に入れた。それは『自室』だ。

 親との交渉で『県立高校入学したら携帯と自分の部屋を提供してもらう』という約束をしていた私は見事自室を手に入れ、創作をしやすい環境へとなった。

 こっぱずかしい内容の小説ノートを家族に見られる……考えるだけでもおぞましい。ちゃぶ台の上に置きっぱなしのノートを母親に見られる。弟と机を並べて勉強していてノートを覗かれる。おおおおお恐ろしい!!

 これを読んでいる創作仲間の諸君もそう思うだろう。……な? 怖いだろう。

 今まで厳重に保管していたノートだったが、自室であれば誰かに見られることなく、さらに好きな時間に創作が出来る。

 何と素晴らしいのだ!!!

 自室で創作をし始め小説『ブルスカ』は着々と進んでいった。

 そんなある日……確か放課後、部活に向かう私にあゆみが言ってきた言葉で私の創作がさらに発展する。

「なずな……パソコンで書けばええのに」

「……何を?」

 私はそう言いながらカバンを手に取る。

「小説」

 あゆみは机に座って私の手直しされまっくたカラフルノートをめくりながらそう言った。

「パソコンだと漢字調べんでいいし、手直しも簡単でしょ?」

「……使いこなせない」

「それはなずな次第だね」

「ううううむ……」と、私は唸って悩んだ。

 パソコン……。

 パソコンの授業を必須にすると世間では盛り上がった時代。その為、中学時代からパソコンの授業があった私も少しは知識がある。しかし、おお!! ナイスアイデア! とはならなかった。

 携帯をやっと使いこなせるようになったばかりの私にはハードルが高い。

「じゃあ携帯は?」

 やちよが話に入って来る。

「携帯かあ……」

 私はまたもや唸る。

 携帯? もちろんガラケーだ。パカパカだ! スライドが流行った時期でもある。画面は小さく画質も汚い。動く絵文字!!? すげえ!!! って時代だ。

「ま~考えとく」

 そんな感じで私は話を濁し、部活に向かった。

 すでに2年ほどノートで小説を書いていた私。それをデジタルにするというのはなかなかイメージしにくい。

 さらに、家にあるパソコンはリビングにある。巨大な箱みたいなやつだ。そいつの前に座ってキーボードを打っていたら目立つ……。目立って家族に画面を見られる。それは絶対にまずい。

 そんな悩みを考えながら私は部活が終え、自転車かっ飛ばして家に帰った。すると事件が起きていた。






 私の部屋に巨大な箱が来ていた。そう、パソコンが私の部屋に設置されていたのである。

「ごねんね。インターネット使うには電話線が無いといけんみたいで、なずなの部屋にしか置けんみたいなんよ」と母の説明を受ける。

 しかも「父さん会社からノートパソコン支給されたけえ、仕事はこれでするしな。なずな使っていいで」と父が笑う。

 これは……『神は私にアナログを卒業しろと言うのか!!!!?』と思うしかなかった。

 そんなこんなで私の部屋でパソコンを使い、小説を書く日々が始まった。このパソコンとは高校を卒業するまで相棒になる。強い味方だ。

 それともう一つ新し相棒が誕生する。『フロッピー』だ。

 『フロッピー』可愛いニュアンス。薄っぺらいフォルム。文字を書き込めるシール。

 これを『あ~~懐かしい』と思えるあなたは私と同年代だろう。今、学生の諸君! USBの大先輩だ! 覚えておけよ!

 私は父から何枚かカラフルフロッピーを貰ったのだ。そいつに小説を保存する事にする。これが相棒だ。

 自室・パソコン・フロッピー・この要素が揃い私の高校時代の創作環境が整った。



 これで誤字脱字とはおさらばだ!!!!!……んなわけあるかい!!!!!!



 そう、パソコンで打ち込んだ小説をルーズリーフに印刷し、回し読みをしてもらうというスタンスに切り替わっても尚、誤字脱字が消えることは無かった。

 回し読みが終わって私の手元に帰って来る頃には、ノート時代と同じようにカラフルに染められている。私はそれを見て毎回頭を抱えるのであった。